薊の森

備忘録

他薦3首と感想②諏訪灯さん

Twitterで希望者を募集して始めた企画、今回は二回目、諏訪灯さんです。

うたの日で筆名で検索して新しい順に書かせていただきました。

 

青空をはじめて目にしたみどりごの瞳に満ちる無垢の明るさ
生まれて間もない赤ん坊が初めて青空を見る、ということは退院の日の出来事でしょうか。「はじめて」「みどりご」を平仮名に開くことでやわらかな雰囲気になっています。まだ世界を知らない故に無垢で、明るさに満ちているという表現が、この先の我が子の幸せと希望の多さを願う親心のようにも感じられます。

 

縁側の猫から子どもに繋がって家族をまわるあくびのバトン
とてものどかな微笑ましい光景を詠んだ歌です。休日の昼間でしょうか、一家が揃っている状態なのですね。あくびがうつるとよく言いますが、それは相手に共感や関心がある脳の働きという説が有力だそうです。子どもは猫に愛情と関心があり、家族もまた子どもに愛情や関心があるということが「あくびのバトン」で表されています。

 

行く道を迷えばいつも思い出すきみの言葉がコンパスになる
「きみ」と呼べる相手ということは恩師や年長者ではないのでしょう。親友、かつての恋人などが思い浮かびます。人生の岐路に立たされて行く道に迷った時、「きみ」の言葉がコンパス、道標になってくれるというのは心強く、信頼のおける相手だと伝わってきます。親友ならばいいですが、かつての恋人だったら少し切ないと感じました。

 

今回、諏訪灯さんの短歌を読ませていただいて感じた印象は、妊娠から出産、育児、大病、家族の歌が多いということでした。諏訪さんとお子さんのシリカさんとも歌会でお会いしましたが、育児の歌は実体験なのかしらと感じることが多かったです。引かせていただいてありがとうございました。

 

(2019/09/05)