薊の森

備忘録

他薦3首と感想①なぎさらささん

せっかくnoteに登録したのに活用出来ていないということで、うたの日から他薦3首とその感想を先着3名で書くという企画を立て、Twitterで希望者を募集しました。今回はその一回目、なぎさらささんです。

うたの日で筆名で検索して新しい順に書かせていただきました。

 

くっついた餃子を箸で剥がす手でいつかは君の骨を拾うよ
火葬場まで付き添って行けるということは、主体は「君」とは結婚しているのでしょうか。まだ恋人の段階なのかもしれません。日常の食卓で餃子を剥がす箸から、いつか火葬されるであろう「君」の骨を拾うという将来の非日常への思考の飛躍が、とても印象的な歌だと感じました。話しかけるような文体ですが、実際に「君」には言っていない、空想の域だと思います。

 

スガキヤのラーメンフォークをいつまでも使えないまま大人になった
スガキヤのラーメンフォーク、東海圏のひとにとっては馴染み深いものですが、それを大人になっても上手く使えないという不器用さが、主体の生きづらさを表しているように思います。大多数のひとは慣れでラーメンフォークを上手く使えるようになるのかもしれません。けれどその中で主体は使えないまま大人になってしまったという孤独感も感じられます。

 

糊代を付け忘れたから人生をうまく組み立てられないでいる
「糊代を付け忘れた」というのは面白い例えだと思いました。工作をするのに糊代がないことは一見すれば致命的な失敗なようですが、組み立てて完成させるためには糊代がないなりになんとかするしかありません。人生も同様です。しかし工作と違って途中で放りだすことは出来ません。主体の生きづらさをユーモラスに表しながら悲哀も感じさせます。

 

今回、なぎさらささんの短歌を読ませていただいて感じた印象は、ポップ、切なさ、野球、実体験に基づいたであろう生きづらさでした。Twitterでもツイートを拝見していますが、人となりが想像出来るような作品が多かったと思います。引かせていただいてありがとうございました。

 

(2019/08/28)